DLGの主翼概念設計・基本設計

新しくDLGを作ることにしたので、設計について書いていきます。

 

機体設計の方針

・スパン1500mm弱(F3Kレギュレーション)

主翼構造はシャーレ(型を流用して矩形部を追加して2m機も作りたい)

・フラッペロン+ラダー+エレベータの4ch・4サーボ

・同じ型でモーフィング翼verが製作可能

・200g以下で成立可能

・体力がないのでランチ高度優先

これを元に設計を固めていきます。

 

他機体の調査

まずは相場を掴むために、実績がある機体のデータをまとめてみます。

 

公開されているデータで一番比較しやすい翼面積と全備重量について見ていきます。

(スパンはどれもほぼ1500mmですし、翼型もほとんど変わらないと考えるとこの翼面積と重量だけでも見てもそれほど問題ないはずです)

 

横軸に翼面積、縦軸に全備重量を取って、翼面荷重が一定となる線を重ねると、各機体の大まかな特徴を掴むことができます。

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・新しい機体は左下に多い(ナロー翼がトレンド)

・ノーバラストでの翼面荷重の下限は翼面積に関わらず10.5g/dm^2程度

 ⇛最近の機体はナロー翼になっても翼面荷重はあまり変化していない

バラスト搭載時は13g/dm^2程度あると良い?

・ふわふわ系のジャベリン機で8~9g/dm^2

といった感じでしょうか。

 

こう見るとColibriの極端さが目立ちます。(190g 16.7dm^2)

https://kralovensky.com/colibri/

 

今回は青い斜線のあたりを狙おうかなーとかなんとなく考えていきます。

 

 

翼型設計

次に翼型を設計します。

速度変化やフラップ角度など、考慮することが多いので、先に翼型を設計し、その翼型で成り立つ平面形を考えます。

 

SuperGee2など、3つ以上の翼型を組み合わせている機体もありますが、今回は慣れている2翼型混合で設計します。翼根用と翼端用の2つの翼型を用意し、スパン方向に徐々に混合率を変化させていく設計法です。

 

翼根用に作成した翼型がこちら。

画像

翼厚比は6.1%、キャンバーは1.7%で、70%以降がフラップです。

AG系をベースに、翼厚をZone V2レベルまで落とし、キャンバーも小さくしています。

前縁は対称翼に近づけ、上昇時の抗力を低減しています。巡航時には少しアンダーキャンバーがつきます。

 

一応断面図を描いて問題がなさそうか確認しました。

写真の説明はありません。

 

次にフラップ角度の影響を確認します。

フラップを1degずつ動かして解析します。

 

発生揚力一定の条件で比較するため、Re*sqrt(CL) =52000の条件で解析します。

(ランチ時などを考えると発生揚力一定とは限らないですが、まずは傾向を見ます)

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フラップを上げると低CL(=高速側)、下げると高CL側(=低速側)にピークが移動することがわかります。

全曲線の包絡線が巡航時に使用できる範囲、ということになります。

 

低CL側は2deg下げでほぼ頭打ちになり、高CL側は4deg下げ以上でピーキーになりすぎるので、

ランチ/スピードモードは-2deg

サーマルモードは3deg

とします。(最終的には飛ばしながら決めますが)

 

 

翼端用はAG47をそのまま使用します。

・翼根用よりも翼厚比が小さく、キャンバーが小さいこと(空力的なねじり下げ)

・翼根用翼型になめらかにつながること

を条件として選択しました。

 

翼面積の仮決定

 翼型が決まったので、以下の条件で翼面積を決めていきます。

・スパンは1494mm(ペグを付けても1500mm以下になるように)

・翼型は翼根用のみ

・楕円循環分布と仮定

・ねじり下げなし

 

スパンと循環分布と翼型を固定しているので、翼面積を決めれば翼弦長分布が決まります。

 

ここから重量を見積もります。

SuperGee2の重量をベースに、各部の重量を仮定します。

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ここから、主翼面積に合わせて重量を見積もります。(尾翼も容積が一定と仮定し、主翼面積に合わせて重量を変化させます)

(今回はシャーレ翼なので主翼重量の大部分の重量を面積比例にしていますが、

中実構造の場合は体積比例成分が入ります)

 

 

翼面積を15~25dm^2の間で変化させると以下のようになります。

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これを先ほどのグラフに重ねると以下の赤い線になります。

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次に空力特性について詳しく見ていきます。

 

 

・ランチ⇛機速16m/s 、CL=0.2、フラップ-2deg

・クルーズ⇛定常釣り合い飛行、CL=0.4、フラップ0deg

・サーマル⇛バンク角20deg、CL=0.7、フラップ3deg 

と仮定して計算していきます。

ここでは相対比較が目的なので、各条件の仮定は適当です。

 

まずは機速です。

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 翼面積が増えると重量も増えるので、意外と速度の変化はゆるやかです。

 

次に各条件での滑空性能です。

 

翼型の抗力係数はレイノルズ数が大きいほど小さくなるので、抗力の計算には以下のグラフの関係を使用します。

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各条件でのRe vs CDの関係です。

低速時ほどレイノルズ数(=翼弦長)の影響が大きいことがわかります。

 

翼型の性能を元に出した形状抵抗に誘導抵抗を足し、以下の項目を見ていきます。

ランチ⇛は抗力の大きさ

クルーズ⇛L/D

サーマル⇛沈下率

 

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 ・ランチ時の抗力は翼面積が大きいほど不利

レイノルズ数増加によるCDの減少よりも翼面積に比例した抗力増加の影響が大きい。

 

・クルーズ時の揚抗比とサーマル時の沈下率は翼面積が大きいほど有利

⇛翼面積を小さくすると(=ナロー翼にすると)速度が上がるため誘導抵抗が減少し(翼幅荷重は一定のため、いわゆる「高ARの効果」とはちょっと違う)、形状抵抗の翼面積成分も減少するが、レイノルズ数減少によるCDの増加の方が影響が大きい。沈下率は速度が遅いほうが有利。

 

まとめると

・ランチ性能⇛翼面積が小さい方が(アスペクトレシオが高い方が)有利

 ・滑空性能⇛翼面積が大きいほうが(アスペクトレシオが低い方が)有利

となります。

 

今回はランチ性能に振りたいので、ベースとしているSuperGee2よりも翼面積を小さい側に振ります。

 

使用した重量モデルから10g程度の軽量化の余地があると仮定すると、18.5dm^2で208g程度であれば成立しそうです。

まずは220gくらいで製作し、徐々に軽量化して200gを目指すと考えると、以下のグラフのようになります。

 

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平面形の決定

それっぽい感じになったので平面形を決定していきます。

ヒンジラインを一直線とし、翼面積が合うように形状を決めていきます。

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ランチ時の横滑り角低減を狙って少し後退角を付け、循環分布調整と翼端失速防止で1degのねじり下げを付けています。

翼型はレイノルズ数に合わせて徐々に変化させています。

 

 

三次元翼の性能や循環分布はXFLRで解析しました。

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今後の拡張性を考えて翼根翼弦は165mmとし、楕円循環分布よりも少し内側に揚力を寄せています。

(構造への負荷低減だけでなく、翼端の翼弦が短いほうがランチ時の振り抜きが軽そうという期待もあります)

 

 

胴体に合わせるとこんな感じになります。

 

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 主翼空力設計は以上となります。

あとは胴体・尾翼・主翼の型などを設計していきます。