2mクラスのグライダーを作る 設計編①  既存の機体の調査

 データを集める

まず、相場を知るためにいくつか既存の機体を調べてみます。

今回参考にするのは以下の機体です。

 

①MINI GRAPHITE

http://f3j.in.ua/mini-graphite.html?#tab6

スパン[m] 1.9
翼面積[m^2] 0.358
翼型 MH32
全備重量[kg] 1.27
翼面荷重[kg/m^2] 3.55


②OMEGA 

http://www.nanmodels.com/models/omega.html

スパン[m] 2
翼面積[m^2] 0.35
翼型 NAN F3J
全備重量[kg] 1.04
翼面荷重[kg/m^2] 2.97

 

③Radina 2M

スパン[m] 2
翼面積[m^2] 0.35
翼型 NH354
全備重量[kg] 1.16
翼面荷重[kg/m^2]

3.31

 

(公式に記載が無いデータは加納さんのサイト( Kanoh's Model Sailplane Workshop)より引用させていただきました。  

 

とりあえず機速とレイノルズ数を出してみる

ここで、

空気密度:1.186 [kg/m^3]

動粘度:0.00001611 [m^2/s]

重力加速度:9.81 [m/s^2]

として揚力の式(L = 1 / 2 * ρ * CL * V^2 * S)から機速を求め、そこから空力平均翼弦長(MAC)でのレイノルズ数(Re)を計算すると以下のようになります。

 

①MINI GRAPHITE

CL 機速[m/s Re
0.3 13.98643 163584
0.4 12.1126 141667.9
0.5 10.83384 126711.6
0.6 9.8899 115671.3
0.7 9.156268 107090.9
0.8 8.564904 100174.3
0.9 8.075069 94445.25
1 7.660683 89598.63

 

②OMEGA

CL 機速[m/s Re
0.3 12.80057 139050.2
0.4 11.08562 120421
0.5 9.915276 107707.8
0.6 9.051367 98323.35
0.7 8.379938 91029.74
0.8 7.838714 85150.52
0.9 7.39041 80280.68
1 7.011159 76160.94

 

③Radina2M

CL 機速[m/s Re
0.3 13.5189 146853.4
0.4 11.70771 127178.8
0.5 10.4717 113752.2
0.6 9.559309 103841
0.7 8.8502 96138.12
0.8 8.278605 89928.98
0.9 7.805143 84785.85
1 7.404609 80434.92

 

仮にL/Dが最大になるのがCL=0.6の時とすると、9~10m/sくらいが相場でしょうか。

 

 

もう少し詳しく見てみる

MINI GRAPHITEとRadina 2Mに関しては翼型の座標データがあるので、もう少し詳細に計算してみます。 

二次元翼の解析

まずはXFLR5(http://www.xflr5.com/)で翼型の解析をしてみます。

ClとCd

f:id:masahiro_ktpc:20180207000340p:plain

 

L/DとCl

f:id:masahiro_ktpc:20180207000453p:plain

 Re*sqrt(Cl) = constで解析しています。(このあたりの話はこちらを参考にしています

Xfoil:解析:OPERルーチンを使う上でのヒント

 

三次元翼の解析

まずはウラジミールモデルの公式サイトの図面をCADに取り込んで採寸してXFLRに打ち込みます。(Radina 2Mは図面がなかったのでMINI GRAPHITEを微調整しました)

f:id:masahiro_ktpc:20180207010625p:plain

 

解析するとこうなります。

f:id:masahiro_ktpc:20180207013120p:plain

( 捩り下げは楕円循環分布になるようにつけています)

 各グラフ

f:id:masahiro_ktpc:20180207014405p:plain

 

L/Dに注目してみます。

L/DとCL

f:id:masahiro_ktpc:20180207014802p:plain

やはりCL=0.5~0.6でL/Dが最大になるようです。

横軸を速度にするとこうなります。

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 基本的にはRadinaの方が揚抗比が高いが、機速変化に対して鈍感なのはGRAPHITE、という感じでしょうか。実際のフライトでは更にフラップによる調整が入るため、性能変化はもう少し鈍感になるはずです。

 

今回はここまで。

次回は全機での揚抗比と沈下率を見ていきます。